絵本の副次的効果を宣伝することの是非について


絵本と子どもについて、絵本専門士と元司書という立場でお話をしているのですが、
親御さんの中には、一定の割合で、子どもと絵本を読む事で、
子どもの頭が良くなるのではないか、
と、期待している方々がいらっしゃいます。

結構ストレートに質問をされることもあったりします。

「頭の良くなる絵本の読み方ってどうしたら良いのですか?」的な、

残念ながら、僕はこの質問に対する答えを持っていません。
日常的に絵本を読んでいた子ども達とそうでない子ども達を比較し、
具体的に学力に差がついていることを証明した
論文等を確認したことがないからです。

1990年の日本保育学会大会研究論文集(1990年5月)の中に
山本道子(姫路短期大学)の論文「読み聞かせと想像・表現」には、
計画的に読み聞かせを行った群とそうではない群との間に
文書力、表現力の差異が認められたとの論文がありますが、
学力に言及されたものではありません。

また、絵本を読む事で学力が伸びたという事例を耳にすることはありますが、
具体的に絵本を読んだことが学力に結びついたと言う証明が成り立ったものについては、
聞いたことがなかったりします。

親子で絵本を読む事は、自らが知らない物語を体験すること、
それが親御さんという、絶対的な安心感の中で行われることにより、
子ども達に安心感、満足感を与えることとなり、
家庭内での日常生活が充実し、結果、副次的効果として学力が向上する、
と言うことはあるかもしれません。

しかしながら、これは絵本の持つ副次的な効果であって、
絵本の本来の役割ではないとも言えます。

僕個人としては、この副次的効果を前面に出して、
「親子で絵本を読む事は良いことだ!」とは、
あまり言いたくないのです。


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