「絵本=子どものもの」は、いつ頃成り立ったのか?


前回、絵本の歴史から考えると、
「絵本=子どものもの」という考え方は、
日本では、そんなに昔からある発想ではなかったのかな、
ということをお話ししました。

では、いつからそうなったのか、ということなのですが、
これは私見ではありますが、1960年代後半から、
1970年代くらいからなのではないかと、
僕は踏んでいます。

日本国内における絵本に関する環境の構築過程において、
欠かせないキーワードが、高度経済成長と昭和30年代の学生運動だと思っています。
日本の絵本創作における第一世代となるかこさとしさんは、
戦後の復興の中で、生活に苦しむ人を支えるセツルメント運動に参加しており、
その根底には、軍国少年として過ごした自らを省み、
同じような子ども達を生み出さないことを目指していたのだと考えられます。

その中で、子ども達に自らの思いを伝えるメディアとして「絵本」という手段が選ばれ、
当時、同じような思いでいた多くの大人達の手から、沢山の絵本が生み出されていったのでしょう。
現在、定番絵本としてよくあげられる『ぐりとぐら』や『はじめてのおつかい』『ぐるんぱのようちえん』
などの1960年代から70年代までの作品を読み返してみると、
どの作品も主人公とその周囲にある「居場所」の暖かさが特徴的です。

太平洋戦争を経て大人になった世代が子ども達に伝えたいメッセージが強く出ている作品により、
「絵本=子どものもの」というイメージができあがったのではないか、
そう考えているところです。


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