『のはらひめ ~おひめさま城のひみつ~』
(徳間書店)1995年5月
なかがわちひろ:作
1995年に出版され、2022年の現代に至るまで、
順調に重版を重ねているので、
これはもう、「スタンダード」といって良い気がします。
女の子が「お姫様」にあこがれるのは、
テーマパークでシンデレラや白雪姫の衣装を
身につけた子ども達の姿を見ると、
「お姫様」という職業(?)は、人気の仕事らしいです。
この物語には、古今東西のお姫様が総登場し、
そのお姫様たちを育てた「おひめさま城」で、「おひめさましけん」に合格すれば、
どんなお姫様にもなれるという破格のオファーを受け取った主人公、
こんな好待遇に「YES!」と返答するのは当たり前でしょう。
お姫様試験の前には、様々な「お勉強」が待っている、
どの王子様の国が一番立派かを知っておくため地理の勉強、
たくさんの王子様に求婚されたときに難しい課題を出すことができるようにクイズの勉強、
どんなに長い間眠っていても寝相が悪くならないように眠るための勉強、
そして王子様を助けに行かなければならなくなった時のためにドラゴンや巨人と戦う訓練等々、
どうやら、お姫様になるためにはどうやらたくさんの覚えておかなければいけないことがあるらしい。
様々な試練に合格して、晴れてお姫様として名前を残すことったとき、
彼女が書いた名前は「のはらひめ」、
そして彼女はお城の人たちに別れを告げて自分が遊んでいた原っぱ堂々と帰っていく。
描かれているのは、憧れは憧れとして自分の中にあり、
実現するべき自分は自分としてビジョンを持っている独立した女性像なのです。
著者のなかがわちひろ氏は、本書を自分の娘の誕生日のプレゼントとして描いたとのこと、
お姫様が大好きな娘にたくさんのお姫様が出てくる物語をプレゼントしたかったのだそうです。
作中の衣裳部屋のドレスの絵は圧巻であり、
我が子が小さい頃、母親と一緒に「このドレスがいい!!」と布団の上で、
興奮気味に話していた姿を見ているので、子ども達にとってお姫様の暮らしは、
やはり魅力的だったのだろうと思う。
時を経て、我が子も成長し、お姫様とは随分異なる分野を歩き始めている。
当たり前だけれども、彼女は彼女の人生を一人で歩く準備を整えつつあることに
驚いたり、ちょっとさみしかったりしています。
ディスニー映画、『白雪姫』の中で「いつか王子様が」を白雪姫が歌ったのは1937年のこと、
まだ見ぬ王子様にほのかなあこがれを乗せて歌うこの曲は、
当時の女性(子ども達?)から見た憧れの人生観であったのだろうと推察します。
『のはらひめ』には、憧れの人がいつか迎えに来てくれる、
そんな姿は微塵もなく、自らの未来の可能性を信じて、
現実の世界を颯爽と闊歩している姿をみると、
親としては「頑張れ!!」と娘の背中をたたいてあげたくなるのです。
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