トラの登場する絵本といわれて、
僕が、ぱっと思い出すのは、『ちびくろ・さんぼ』です。
岩波書店版の赤い背景にサンボを中心として、トラが三匹という表紙は、
我が家の本棚にいつの頃からかありました。
日本では、1953年に出版され、
1988年の黒人差別批判を受けて絶版となるまで、
長く愛されていた絵本です。
その後様々な議論と、多くのバージョンの『ちびくろ・さんぼ』が出版された訳ですが、その辺のことについてはちょっと置いておいて、
子どもの頃に読んだこの絵本の中で、トラがぐるぐる回りすぎて、バターになっちゃう下りは、
個人的にはとてもショックで、生き物は時にとんでもない変身をとげてしまうのだと、
ちょっと信じていました。
年を経て「そんなことはない」と言うことを知るに至る訳ですが、
そのあたりの経緯は、実はこの本の絶版騒動にもちかい者があるかもしれません。
社会の成熟につれて、これまで是としてきたものが、逆転するというのは、
時々の価値観が異なるわけですから、
そういうことも起こりうる訳で、
社会の成熟=子どもの成長 と考えるとなんとなく、
今まで良い(もしくは本当)と思っていたことが、
実は悪い(もしくは嘘)だと、わかるというのは、
仕方のないことなのでしょう。
とはいえ、これまでの考え方の変遷を全て否定するのではなく、
その時点、その時点での価値観を認めた上で、
どのように活用するのかも大切だと思うのですけれどもね、
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