『なまえのないねこ』(小峰書店)2019年4月
竹下文子:文 町田尚子:絵
「地域猫」という名称が社会で使われるようになったのは、
いつ頃からなのでしょうか、
僕が子どもの頃には「野良猫」と称されていた飼い主のいない猫たちは、
地域の中のあちこちで見ることができました。
最近は、めっきりそういう猫たちの姿を見る機会は減りましたが、
「地域猫」という呼称がある訳ですから、完全にいなくなった訳ではないようです。
表紙の猫の表情は、何かを訴えているようで、寂しそうで、この物語がどのように展開していくのか、
ちょっと心配になります。
そして、ページを捲ると、街中の猫たちが、いろいろな名前で呼ばれているのに、
主人公となる猫だけは「ネコ」と呼ばれている。
そして、最後に初めて名前をつけてもらうことができる。
名前は猫にとっては居場所と同じ意味を持つものだったのです。
果たして、僕たち大人は、子ども達にきちんと居場所を提供できているのでしょうか?
そして、その居場所は子ども達にとって、安全で居心地の良い場所になっているのでしょうか?
子ども達にとっては、居場所を求めて彷徨う猫の物語として、
大人にとっては、自らの行動を顧みるヒントとして、
さまざまな捉え方のできる絵本だと思います。
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