絵本の歴史から、絵本は子どものものなのかを考える


今回は、絵本専門士として、認定されるまでの間に
得た知識を再確認する目的で、ちょっと書いています。

絵本とは何かを考えるときに必ず出てくるのが、
「絵本は子どものものなのか」という課題です。

そもそもの絵本の成り立ちを考えると、
欧米での絵本の最初はコメニウスの『世界図絵』とされており、
この本は「挿絵入り教科書」であったことから、
絵本の起源と言われています。

国内に目を向けると草双紙という江戸中期の娯楽本などがありますが、
どちらかというと、大人向けに描かれたものであり、
今で言うところの青年誌漫画といったイメージです。

そもそも、絵本とは絵と文章で構成された本のことであって、
絵と文章が相互に補完関係にあることで、一つの作品として成り立つものと考えられます。
ちなみに絵と文章の補完関係があっても、コマ割りされているものは「漫画」と言って良いでしょう。

この文章からは「絵本=子どものためのもの」というイメージを導き出すことは難しいです。
アメリカにおいては、絵本が子ども向けの文学作品としてリリースされた初期のものとして、
ワンダ・ガアグの『100まんびきのねこ』がよく紹介されていますが、
その創作の裏側には、大人の側が子ども達に良質な読書環境を提供していないというジレンマが
『100まんびきのねこ』に結びついたと考えられています。

ここまでのことで、
絵本の定義は「絵と文章が相互に補完関係にある本というメディア」であること、
その定義から考えると「絵本=子どものためのもの」ではないということ、
子どもに向けて絵本をリリースするのは、大人が子ども達をどう育てていきたいか、
という部分に大きく関係しているということが分かります。

ここ何年か、絵本はちょっとしたブームになっていて、
多くの絵本がリリースされていますが、
その中には、子ども達が読むには少し難解なものもあります。
けれども、それで良いのです。
だって、絵本は子どものためのものではないのだから、
大人が楽しむ絵本だってあるのです。



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