司書として働いていた頃から、
「絵本は誰のためのもの?」
というのは、ちょっとした悩みでありました。
当時、僕の勤務していた図書館は、図書館と名乗るのもおこがましい、
公民館の一角にある「図書室」のようなところでした。
そんな狭い場所にドン・キホーテのように本棚が並び「圧縮展示」されていたのですから、
利用者がすれ違うのもやっとという感じでした。
当時、図書館に有名な利用者がいて、その人から言われたのが、
「こんな狭い図書館に絵本なんか置くんじゃない!」
という、お叱りの言葉でした。
当然、このあと僕は、行ってきた相手に対して、
公共図書館は、大人だけが利用するものではない、子ども達に物語を提供するのも図書館の役割なのだ、
という趣旨の発言をして、相手の方と大喧嘩となったのですが、
(けど、この人も僕が図書館を離れる頃には「子ども達の成長のためには、図書館で物語に触れることは大切だ」と言ってくれるようになりました。)
今になって思うと、当時の僕は、絵本=子どものものという認識で仕事をしていたのだなと、反省してしまう訳です。
絵本にふれ、子ども達に絵本を届ける活動を続けていると、
子ども達の後ろには、見守ってくれる多くの大人達がいました。
お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、近所の大人達、などなど・・・
絵本を手渡す行為の中には、そんな大人達の気持ちが込められていますよね、
大人達が絵本を手渡すときには、少なくともその絵本に共感している訳ですよ、
絵本の作り手の側だって、大人達への応援として絵本を作っていることだってあるでしょう。
絵本って、子どものためのものでも、大人のためのものでもあるのだということが分かると、
作品一つ一つの見方、味わい方が随分と変わってくるのではないでしょうか、
大人の目で見て、子どもの目で見て、両方の視点で絵本を楽しむことができれば、
きっと、大人と子どもの関係性だって、より楽しいものになるはずです。
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