『ぐりとぐら』の世界にいたことがある。


僕は、母の影響で絵本が好きになったといって差し支えないでしょう。
母は、教員ということもあり、福音館の月間絵本「こどものとも」を定期購読してくれていました。

その中で、印象的だったのが『ぐりとぐら』でした。

あの、カステラのおいしそうなこと、
ほかの動物たちと一緒に食べている絵に心が躍りました。
カステラを楽しみに待っている動物たちの中には、
寝る前に読んでもらった『いやいやえん』のオオカミの姿まであります。

異なるストーリーではありながらも、同じ世界観の中で登場人物が暮らしていると
想像すると、『ぐりとぐら』も『いやいやえん』も僕の過ごしている毎日と地続きになっているように感じました。

僕が、幼稚園に行っている毎日のどこかで、『いやいやえん』も開園しているし、『ぐりとぐら』は森の中で毎日を過ごしている、

そして、ある日僕は母にこう言いました。
「『ぐりとぐら』のカステラが食べたい」と、

その結果、母が考えたのは、カステラを作ることではなく、
『ぐりとぐら』の絵本の中に僕を書き込み、
僕のいる『ぐりとぐら』を作ってくれたのです。

多分僕は、そのときの経験を今、絵本を手に取ろうとしている子ども達に手渡したいのだと思います。

絵本の世界と僕たちの住む世界は、どこかに繋がりがあること、
その繋がりは、大人になったときに子ども達に手渡すべきものだということを
伝えていきたいのです。


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