絵本には、同じテーマを扱っていても
その捉え方が随分と異なるものが在ります。
例えば、弟や妹の誕生を描いた絵本、
『ちょっとだけ』(福音館書店)
作:滝村裕子 絵:鈴木永子
は、弟の誕生で忙しい母をみて、
母に甘えるのを我慢しながら、日常の出来事を
少しずつ自分でやっていく少女の姿が描かれています。
この本はお母さんの立場で読めば、
甘えたい盛りの少女のけなげな姿に
「我が子もこうあって欲しい」という感情が生まれることは理解できます。
けれども、実際に子ども達にこの絵本のような我慢を強いることは、
かなり難しいので、子ども達から見たら、
「こんなにがまんをしなくてはいけないのか」と不安になるのではないでしょうか?
同じ兄弟の誕生を扱った絵本でも
『あげます。』(ポプラ社)
作:浜田佳子
は、誕生した妹を「へんなの」とよび、
かまってくれなくなった両親に怒り、嫉妬し、排除しようとします。
嫉妬しつつも、妹との日々の過程のなかで、妹がかわいくなってくる、兄としての成長の過程が描かれており、
「こうなれるといいな、」という子どもの側からも共感することができる仕組みになっています。
また、
『あかちゃんがきた!』(アリス館)
作:サトシン 絵:松本春野
は、『あげます。』よりも更にポジティブに
兄になった自分を喜び、
兄弟で在ることに喜びを感じる、
子どもと家族の姿が描かれています。
最近、僕の周りにいるきょうだい児達を見ていると、
我慢をしたり、我慢をしたりという感情よりは、
家族が増えることで役割の変わる自分を前向きに
捉えている子が多いので、
この絵本の子どもの姿に共感する人も多いのではないかと思います。
このように、同じテーマを扱っていても、全く異なる切り口で語られる物語が沢山在る訳ですから、
誰に何を手渡すのかをよく考えると言うことが大切だったりするのです。
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