バンドゥーラ~”ジャングルの誇り”とよばれたゾウ~


『バンドゥーラ~”ジャングルの誇り”とよばれたゾウ~ 』
(評論社)2022年11月
ウィリアム・グリル:作 佐藤見果夢 :訳

ミャンマーという国では、
昔から労働力として象が使役されていました。

この絵本に出てくるバンドゥーラは、
労働力として使われていましたが、
一人のイギリス人男性との出会い、
賢い象との出会いにより、男性は、
象たちの就労環境の改善に動き出します。

男性の尽力により、象たちの就労環境は改善していきますが、
第二次世界大戦の戦火により、象たちは戦力として徴用され、
「ゾウ部隊」が編成され、象たちは戦火へとかり出されていきます。

運輸手段として、食料として、使役されたゾウたち、
私たち日本人はあまり知りませんが、
調べてみたら、戦争の道具としての象、労働力としての象の歴史は長く、
人間というのはなんとまぁ、
どんなものでも自分の都合の良いように、
周囲のものを使いたがるものだなと、あきれてしまいます。

僕たちの知らない、ミャンマーという国の象との生活の歴史は、
今の私たちが抱えている「いじめ」や「ハラスメント」と重なるものがあります。

作者は『シャクルトンの大漂流』でケイト・グリーナウェイ賞を受賞しており、
今回の作品も情報量の多さに驚きつつも、
丁寧な描きぶりで、読みやすくなっています。

僕らの知らない場所、知らない時間に起きた出来事を知り、
現代の課題に思い至る、これもまた、絵本の効果かもしれません。


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