『かけだしたイス』 (主婦の友社)2020年11月
サトシン:作 ドーリー:絵
イスは、普段ので生活の中で、
自ら駆け出して、広い空の下を疾走することはありません。
でも子ども達は、学校や家の中で、
椅子を馬や車のように操り、
猛スピードで大人の前を駆け抜けていきます。
生活の中で、イスは使役されるものであって、
自らが主体となるものではありません。
しかし、この絵本で、イスは自らの力で、
走ることに目覚め、自らの意思で、
ライバル達と対峙します。
あり得ないことをすでに起きた出来事のように描くストーリーは、
僕たち大人はなんとなく「できない」と
あきらめている姿を子ども達に見せいるのではないかと、
問いかけているようにも感じます。
「できない」とあきらめるのではなく、
大人だからこそ「できるかもしれない」に向かって行く姿を
きちんと子ども達に見せることで、
子ども達は「大人ってすごい!」と思い、
自らが大人になったときに、また子ども達を見守り、
育む存在に成長してくれるのではないでしょうか。
この絵本のイスのように僕たち大人も、
日々の生活を駆け抜けて、
時代の子ども達がバトンを受け取って、
自らの力で、「走って行こう!」
そう思える場所を作っていかなければいけないのです。
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