子育ての現場にいると、親が親であることの輪郭が、
以前よりもずっと薄くなっているように感じることがあります。
働き方は変わり、地域のつながりは細くなり、祖父母の育児観も現代の子育てと噛み合わない。
親になる前の「親経験」がほとんどないまま、子育てが始まってしまう家庭が増えています。
その結果、子育てを楽しむ余裕が持てないまま、ただ日々をこなすだけになってしまう親が少なくありません。
こうした状況の中で、産後ドゥーラのような支援が注目されるようになりましたが、
僕がいま強く感じているのは、産後の支援だけではなく、
家庭の中に“子育ての文化”をもう一度立ち上げる必要があるということです。
その文化を育てるために、絵本はとても大きな力を持っています。
親の声やまなざし、ページをめくる静かな時間。
絵本は、親子が「一緒にいる時間」を豊かにするための、もっともシンプルで強い文化的な道具です。
そして絵本専門士は、その文化を家庭に届けるための“地域のファシリテーター”として設計された資格です。
絵本を読む技術を持つだけではなく、絵本を通して親子の関係性を整え、
家庭の中に小さな文化の灯りをともす役割を担っています。
ただ、現状では絵本専門士の活動は、図書館やイベントに限られがちで、
家庭の中に深く入り込む仕組みが十分ではありません。
親が孤立しやすい時代において、絵本専門士が地域の中でどのように機能し、
どのように持続可能な形で活動していくかを考える必要があります。
僕が考える方向性は、絵本専門士が単独で活動するのではなく、
産後ドゥーラや助産師、保健師、保育士など、地域の専門職とゆるく連携しながら、
家庭の文化を支えるネットワークの一員として機能することです。
絵本専門士は「親子の時間」を豊かにする文化的支援を担い、
家庭の中に“楽しむ余白”をつくる役割を果たせるはずです。
そして、活動を続けるためには、マネタイズの仕組みも整えなければなりません。
自治体の子育て支援事業との連携や、こども園・図書館との協働、
家庭向けの読み聞かせ支援のサブスク化など、複数の収入源を組み合わせることで、
絵本専門士が安心して活動できる環境を整えることができます。
子育てを楽しむためには、親に余白が必要です。
その余白をつくる文化として絵本があり、
その文化を家庭に届ける案内人として絵本専門士がいます。
子育ての文化が痩せていく時代だからこそ、
絵本専門士の役割はこれからもっと大きくなるはずです。

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